Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【要注意】ピロリ菌の除菌が成功してもピロリ菌未感染の人に比べれば遥かに胃がんになりやすい。除菌後もしっかり1年に1回胃カメラを受けましょう。

 

 

はじめに

 

「ピロリ菌は胃がんの原因になる。だから除菌する。

しかも若いうちに除菌した方が効果が良いと言われているので、

早めに除菌する。除菌成功。もう、私は大丈夫。」

 

と思っている方いませんか?

 

実際に、

「ピロリ菌をやっつければ、私はもう大丈夫。」

と思っている方が多いです。

 

しかしピロリ菌に感染したことがあるだけで、

感染したことがない人に比べて遥かに胃がんになる確率は高いのです。

 

そのため、私たちの外来では必ず伝えるようにしていますが、

それでも初めて来院される患者さんの中には、

除菌したからもう大丈夫と誤解されて胃カメラを受けていない方が多いです。

 

そしてそのような方に、進行した胃がんがみつかることが多いです。

手術が可能な場合でも、胃の2/3以上は切除することが必要となります。

 

そのため、今まで通りに食事を食べたりするのが難しくなったり、

御高齢の方では、

手術後に体力が低下して今までのように生活ができなくなったりします。

 

中には手術も困難で、治療自体も難しい人もいます。

 

 

今回はこのような誤解が少しでも減って

除菌後も健康な生活を送れるように

除菌後の胃カメラが大切であることと、

その理由を以下に書いていきたいと思います。

 

 

除菌が成功しても胃がんになる確率は高い

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除菌が成功すれば、確かに胃がんになりにくくなります。

比較的若いうちに行えば、胃がんになる確率が1/2〜1/3に減る

されています。

 

しかしピロリ菌に感染している人は元々、

感染したことがない人に比べて圧倒的に胃がんになる確率が高いです。

 

そのため、除菌が成功しても、

未感染の人に比べると遥かに胃がんになる確率が高いです。

 

そのため、除菌の成功したかどうかに関わらず、

ピロリ菌に感染したことがある人は、

他の人よりもしっかり1年に1回胃カメラを受けることをお勧めします。

 

 

除菌が成功しても、胃がんになる確率が高い理由

 

では何故ピロリ菌がいなくなっても、胃がんになる確率が高いのでしょうか?

 

それは、既に胃の粘膜がピロリ菌にやられている部分があるからです。

ピロリ菌がなくなったからといって、

このやられた部分が完全に回復する訳ではないのです。

 

またカメラでも見えない細胞や遺伝子レベルで

既に胃がんが発生してしまっている場合もあると考えます。

 

 

では除菌はしなくてもいい?

 

既に胃がんになったことがある人は、

除菌しても胃がんの発生を抑えることは難しいとされています。

 

これは胃がんができやすい粘膜が既にできてしまいるため

あるいは細胞や遺伝子レベルで既に胃がんが発生してしまっていること

が原因として考えられます。

 

また除菌の効果が顕著に出るまでには時間がかかり、

高齢になってくると今までにピロリ菌に荒らされた胃の粘膜が回復しにくいので、

あと10年くらい生きれるかどうかという人も除菌の効果はあまり見込めないと考えられています。

 

除菌は薬(抗生剤2つと、強く胃酸を抑える薬1つの計3つ)で行うので

これらの薬に対して強いアレルギーが出る人には

危険を伴うので除菌をしない方が良いでしょう。

 

しかし上記のような例でなければ、

特に若い方であれば、除菌を行った方が良いです。

 

除菌を行えば、ピロリ菌をいなくなり、

今後の貴方の胃粘膜を荒らして胃がんになりやすくするのを

最小限に抑えることができます。

 

 

最後に

 

ピロリ菌は胃がんを引き起こす大きな原因ですが、

除菌が成功しても要注意です。

 

除菌を行うまでに貴方の胃粘膜は荒らされており、

感染したことない人に比べれば、遥かに胃がんになりやすい状態になっています。

 

今は除菌が失敗に終わっても、

定期的に1年に1回胃カメラを行えば、

早期胃がんとして発見できることが多く、

その場合は胃カメラで治せる時代になりました。

 

除菌が成功したメリットは大きいですが、

それだけで安心せずに、定期的な胃カメラを受けることを勧めます。

 

この記事がピロリ菌に感染したことがある人にとって

今後の胃がん対策の一助になれば幸いです。

 

 

 

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