Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【重要】癒着とは、傷が治ることでできる。その原因は、手術や臓器の外で炎症を起こしたことによるもの。

 

 

はじめに

 

癒着と聞くと、悪いイメージを持っていませんか?

 

政治の世界ではもちろん、

医療の世界でも悪いイメージを持った人が多いと思います。

 

医療の世界では、癒着があるから、

「手術が難しくなります」

「大腸カメラをすると、痛みを感じやすくなります」

「腸閉塞になりやすいです」

など、何かと悪いことがあれば癒着のせいになることが多いため、

 

一般の人も、癒着には悪いイメージをもっている人が

多いのではないかと思います。

 

そのため、手術の際に

「絶対に癒着を起こさないでください」

と言われる方もおられます。

 

しかし「本当に癒着は悪いもの?」なのでしょうか。

 

今回は「癒着」について書いていきたいと思います。

 

 

癒着とは何か

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皮膚を擦りむいたり、切ったりしたところが治ってくると、

まず傷口がくっつくと思います。

 

同じようにこれが体の中で起こると、

傷口がくっつきます。

 

胃の中や大腸の中など、臓器の中で起こると

近くにある粘膜がくっつくだけで終わります。

 

しかし臓器の外で起こると、

臓器と周りの構造物(血管やお腹の壁など)とくっつきます。

これが「癒着」です。

 

つまり、癒着とは「体が傷を治すことでできたもの」です。

 

もし癒着する(周囲のものとくっつく)ことができなければ、

傷は閉じず、開いたままになり、

いつまでたっても傷は治りません。

 

 

手術をすれば、必ず癒着ができる

 

胃カメラや大腸カメラの治療では、臓器の中から治療をするので癒着は起こりません。

 

これに対して手術は、必ず皮膚を切って、

体の外から入り、臓器の外から原因の部分に近づいて切除するので、

臓器の外に傷ができます。

 

そのため、手術では大なり小なり必ず癒着が生じます。

 

 

癒着が起こると、どのようなデメリットがあるか

 

癒着が起こっても、傷を治しているだけなので、

悪さをしないことの方が圧倒的に多いです。

 

しかしたまに変なところにくっついてしまい、悪さをします。

 

その結果、

腸が捻れてつまる(腸閉塞)の原因になったり、

大腸カメラをする際に大腸が引っ張られて痛みを伴いやすくなったり、

手術をする際に臓器との境界がわかりにくくなって手術が難しくなることがあります。

 

 

癒着が問題になるのを完全に予防するのは難しい

 

癒着とは、どの世界でもイメージが良くないですが、

医療に限って言うと、

これがあるおかげで、傷が治ります。

 

そのため、

傷が治るレベルでは癒着は起こってもらわないと困ります。

 

一方で

変なところとくっついて癒着で問題が起こらないようにしていくのが理想です。

 

ただ全ての例で問題が起こらないようにするのは難しく、

こうすれば絶対問題を起こさないという方法も残念ながらないのが現状です。

 

手術の場合は執刀医が変なところとくっつかないように気をつけていますが、

人間の体の動きは予測できない部分も多く、

お腹を閉じた後はどのような状態になるかは、

誰にも完全には予測できないからです。

 

 

最後に

 

癒着は、貴方の体が傷口を頑張って治そうとした成果です。

 

この働きは

体が傷を治すのになくてはならない作用です。

 

ただ不幸にも、癒着が前述のような問題を起こすことがあります。

 

できる限り問題を起こすような癒着が起こらないように

現場では様々な工夫がなされていますが、

癒着の原因となる作用を完全に抑えれば良いというものでもなく、

現時点では、問題となる作用を最小限に抑えるように工夫するだけに

とどまっています。

 

今後も問題となるような癒着を抑えるための工夫は続くと思います。

将来、問題となる癒着が起こらなくなるような工夫が発見されてたり、

製品が開発されることを私も期待しています。

 

 

 

 

 

 

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