「大腸がんを手術で取り切ったはずなのに、再発した。」
それは手術で大腸がんが取りきれていなかったから
再発したのではないか、と考える方がいます。
そして「がんを取りきれなかったのは、手術ミスだ。」と。
本当にそうでしょうか?
今回は、大腸がんを例にがんが再発する理由と
再発を出来るだけ減らす方法について
書いていきます。
大腸がんが再発する理由
がんが再発する理由は、がんを取りきれなかったからです。
しかし手術ミスをしたからではないです。
現在の医学は以前と比べればかなり発展してきました。
CTもかなり詳細な部分がみえるようになり、
大腸がんであれば、大腸カメラで直接がんを見ることができます。
しかしそれでも限界があります。
がん細胞を細胞レベルで確認することは出来ません。
例えば、ごく僅かのがん細胞だけが血管の中に残っていたり、
他の臓器に転移していても現在の医学では確認はできません。
そのため、手術を行う時点で既にCTなどの画像検査では検出できない
小さながんが、肺、肝臓、腹膜、原発巣から離れたリンパ節に
転移していることがあります。
それが時間の経過とともに徐々に大きくなり、
目に見える大きさになって後日「がんが再発した」
と診断されることになります。
再発を減らすための方法
再発を減らすためには以下のような方法があります。
早い段階で大腸がんをみつける
大腸がんを出来るだけ早い時期にみつければ、再発する確率は低くなります。
それはリンパ節や他の臓器に転移する確率が低くなるからです。
そのためには、定期的に大腸カメラを受けることをお勧めします。
状況(ポリープの有無など)に応じて検査を受ける間隔は短くなりますが、
再発しやすい時期にしっかりと検査をする
再発される方のうち約95%は手術を受けて5年以内に起きています。
つまり、5年を経過したら再発の危険は0にかなり近いたと考えてもよい
でしょう。
それまでは、それなりの確率で再発する可能性があり、
再発の有無を定期的に確認する必要があります。
具体的には、CT検査、腹部超音波検査、
腫瘍マーカーの血液検査、大腸カメラの検査を受けることになります。
一般的には、大腸カメラは3年目までは1年ごと、
CT検査は5年目まで半年ごと。
腫瘍マーカーの血液検査は3年目までは3ヶ月ごと、4年目からは半年ごと
の間隔で行います。
必要ならば抗がん剤治療を受ける
手術を行った時に切除したリンパ節を顕微鏡で調べた結果、
転移があれば、ステージ3以上になります。
ステージ3であれば、手術後に抗がん剤を受けることで
再発率が7%前後低下させることができるとされています。
ステージ3全体の再発率が約30%であるので、
たった7%と考えられる方もおられます。
しかし原発巣、肝臓、肺、腹膜、遠くのリンパ節など、
手術で切除することが不可能な部分に再発することも多く、
再発した場合は、がん細胞を取りきるのは難しくなります。
そのため、7%でも再発する確率を減らすことは、
確率以上に意味があり、
ステージ3で抗がん剤治療を受ける体力があれば、
抗がん剤治療を受けることを勧めます。
食生活に注意する
どのような食生活を送るかも再発に影響を与えると考えられているので、
食生活にも注意していくことをお勧めします。
また大腸がん以外のがんが新たにできる可能性も常にあります。
そのような意味でも、がんになりにくい生活習慣を心がけることを
お勧めします。
最後に
「手術でがんは取り切った」という言葉をより正確に言うと、
「現代の医学で確認できる範囲で、がんは取り切った」
ということになります。
現代の医学では、
細胞レベルで体内に散らばったがんを確認することは
残念ながらできません。
ましてやその場所を特定して、除去することはきません。
つまり、「手術でがんは取り切った」と言われて再発した場合、
それは基本的に手術ミスではありません。
手術自体はどれだけ完璧にこなしても上記の理由で
再発する時は再発してしまいます。
そのため、再発しにくくすることが大切になります。
また予防や早期発見も重要になります。
この記事が再発に対する患者側と医療者側の衝突を減らし、
今まで以上に一丸となって再発予防に取り組むことができる
一助になれば幸いです。