Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【必見】大腸カメラで痛みが出やすい人と、出にくい人の違い。症状がなくて体調が良い時にこそ、大腸カメラを受けるチャンス。

 

 

はじめに

 

大腸カメラを受ける必要性は理解しているけれど、

「痛みが出ることがあるから」

「以前に検査を受けた友人や家族が痛がっていて辛い思いをしたので」

「何十年も前に検査を受けた時に辛い思いをしたから」

などで検査を受けることをためらっていませんか?

 

何十年も前は、大腸カメラ1件に2時間くらいの時間が必要だったと聞いています。

しかも2人でカメラを操作したりしていた時代もありました。

 

しかしその後、

大腸カメラを大腸の奥まで痛みがない(あるいは少ない)状態で

入れる方法が発見されました。

 

その方法とは、大腸カメラを1本の軸として保持しつつ、

腸をできるだけ伸ばさずに、畳んで奥まで入れる方法です。

 

これが世の中に広まり、

痛みがなく3〜5分前後で大腸カメラを大腸の奥まで入れることが

できるようになりました。

 

そして今では多くの施設でこの方法で大腸カメラの検査を

受けることができるようになりました。

 

しかし中には、腸が伸びやすい人など、

腸を畳むだけでは奥までカメラを入れるのが難しい人がいます。

 

そのような場合も必要以上に腸が伸びないように

必要な箇所を必要に応じてお腹を抑えることによって

痛みをほとんど感じさせないように検査を完遂できるようになりました。

 

このように多くの方では

大腸カメラは痛みもほぼなく、検査自体は辛くないものです。

 

しかし中にはどうしても難しい腸の人がいて、痛みが出やすいことがあります。

 

実は難しい腸の人は誰がやっても難しいことが多く、

痛みが出現しやすいことが多いです。

このような方にはある程度特徴があります。

 

今回は大腸カメラで痛みが出やすい、上記のような人について

以下に書いていきたいと思います。

 

 

大腸カメラで痛みが出やすい人

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大腸カメラでで痛みが出やすい人は、次のような場合です。

 

・太った男性

・痩せている女性

・腸が敏感な人

・緊張しやすい人

・お腹に力が入りやすい人

・S状結腸が長い人

・深呼吸をした状態で息を止めることができない人

・検査中に体の向きを変えることができない人

・腸炎を起こしてから1ヶ月経過していない人

・お腹の中の癒着が強い人

・検査前に腸の中がきれいにならない人

・腸の動きが強い人

などです。

 

以下に、1つずつ細かく理由を書いていきます。

 

 

太った男性

 

肥満のある男性で極度に太っている方は、

お腹の中でカメラがたわみやすくなります。

そのため、推進力が得られにくく、どんどん腸が伸びてしまいます。

 

腸は伸びると、痛みを感じるので、

カメラがたわむほど、痛みを感じるようになります。

 

解決策としては、体重を減らすことはもちろんですが、

現場ではお腹を圧迫して腸がたわみにくくします。

 

ただかなり太っている方であると、

お腹自体を圧迫することが困難なため、無効なことが多いです。

 

この場合はうつ伏せになって頂き、

自分の体重を使ってお腹を圧迫してもらうことによって

カメラを進ませることができることがあります。

 

また日本人にはあまりいませんが、

女性でもかなりの肥満であれば、同じような状況になり得ますので

女性だからといって安心せず、食べすぎ・飲みすぎには注意して下さい。

 

 

痩せている女性

 

痩せている場合、特に女性では、お腹のスペースが極度に小さくなります。

そこに腸が折り畳んで入っているため、

腸の曲がり角がとても強くなります。

 

するとカメラで腸を引っ掛けることができないため、折り畳むことができず、

止むを得ず腸を伸ばさないとカメラが進まないことがあります。

 

現場での工夫としては、

腸をできるだけ伸ばさないようにお腹を抑えます。

 

また腸に強い力がかかると、

ある程度腸に沿って曲がるようになっているカメラを使用する方法もあります。

これにより、できる限り腸を伸ばさないようにします。

 

 

腸が敏感な人

 

ほとんど腸を伸ばしていないけれど、痛みを感じてしまう人が中にはいます。

このような人の場合は、対処に困ることが多いです。

 

現場では、できる限り腸を伸ばさないように

カメラの進め方、カメラの種類、お腹の圧迫、体の向きを変える、

眠たくなる薬、痛みが和らぐ薬などを併用します。

 

それでも検査が困難な場合は、

CTや大腸カプセルなどで代用することを考えます。

 

 

緊張しやすい人

 

緊張しやすいと、腸の動きが強くなりやすいです。

そのため、腸の中を通過するのが難しくなり、

腸を押す形になって伸びてしまうことが多いです。

 

また緊張しやすいと、痛みを感じやすくもなります。

 

このような場合、

現場では緊張を和らげるための声がけや、

少し眠たくなる薬などで緊張を和らげることが多いです。

 

 

お腹に力が入りやすい人

 

お腹に力が入りやすいと、腸が伸びるべきところで伸びることができなくなり、

またお腹を圧迫すべきところで圧迫できなくなります。

 

結果としてカメラが入りにくくなり、

必要以上に腸を伸ばすことになってお腹が痛くなってしまうことが多くなります。

 

現場では、声かけ緊張をとる薬で対処することが多いです。

 

 

S状結腸が長い人

 

S状結腸は大腸カメラの検査で一番の難所で勝負どころであり、

ここを伸ばさずに入れることができれば、

9割以上大腸カメラを奥まで入れることができます。

 

そのため、この難所が長いと

純粋に検査の難易度が高くなります。

 

またこの部分が長い時は折り畳まれてお腹の中に収納されているので、

曲がり角が急峻になることも多く、

腸を良い形で折り畳むのが難しくなります。

 

現場ではできる限り腸を折り畳む工夫をして、

難しいようであれば、カメラの種類、お腹の圧迫、体の向きを変える、

眠たくなる薬、痛みが和らぐ薬を併用して対処しています。

 

 

深呼吸をした状態で息を止めることができない人

 

お腹の左上の部分と、右上の部分とでは

深呼吸をしてもらった状態で少し息を止めて頂くことで

カメラを進めていくことが多いです。

 

なぜなら、そうすることで

横隔膜が平坦化します。

するとカメラがたわみにくくなり、

腸が伸びにくくなるからです。

 

つまり、深呼吸をした状態で息を止めることができないと、

腸が伸びる頻度が高くなり、

痛みが出やすくなります。

 

このような場合、

現場では、お腹を圧迫したり、体の向きを変えたりして対処します。

 

 

検査中に体の向きを変えることができない人

 

カメラ先端に空気が貯まると、少ない空気の量でも

カメラが進むべき腸管の方向を確認しやすくなります。

 

また空気が入りすぎるとお腹は張りますし、

それだけでも腸が伸びてしまうので、

少量の空気を有効に活用する方が苦痛が少ない検査になります。

 

そのため、検査中には体の向きを変えてもらい

少量の空気を出来るだけ有効に活用できるようにしています。

 

しかし怪我や持病などの関係で体の向きを変えることができない人の場合、

上記の方法が使えないので、

大腸の奥までカメラを進めるのに苦労することがあります。

 

このような場合、現場ではその他の方法でできる限り腸が伸びないように工夫して

検査を行うことで対処しています。

 

 

腸炎を起こしてから1ヶ月経過していない人

 

腸炎を起こした直後は特に、腸が痛みに対して敏感になっており、

大腸カメラを行うと痛みを伴うことが多いです。

 

大腸カメラの目的は、大腸がんをみつけることであり、

緊急で大腸カメラが必要になるケースは非常に少ないです。

 

腸炎にしても

ごく一部の例外を除いて治療を行うのに、

緊急で大腸カメラは必要はありません。

 

そのため、

特別なことがなければ、腸炎が治ってから1ヶ月後に検査を行うのが

苦痛も少なくてお勧めです。

 

 

お腹の中の癒着が強い人

 

炎症が怒ったり、手術を行うと、傷が治るように体が反応します。

臓器の外でこの傷口がくっついて治ることが癒着であり、

癒着は臓器の外で強い炎症を起こしたり、手術を行えば必ず生じます。

 

この癒着の程度や場所は、

治療前の病気の状態や、手術の内容によっても違いますが、

癒着が強い人は、カメラを進める際に腸が引っ張られて

痛みを生じることがあります。

 

これについてはカメラの種類、お腹の圧迫、体の向きを変える、

眠たくなる薬、痛みが和らぐ薬などで

対処をしています。

 

 

検査前に腸の中がきれいにならない人

 

大腸カメラは、1.5〜2リットルの腸を洗う液体を飲んでもらって

腸の中をきれいにしてもらってから検査を行います。

 

しかし強い便秘がある方や、上記の液体を飲みきれない人では

腸の中がきれいにならないことがあります。

 

そうなると、腸の方向を確認するためにも

検査中にいつもより空気を入れなくてはならなくなり、

腸が伸ばして入れる方法でしかカメラを進められなくなったりします。

 

このような場合も、

カメラの種類、お腹の圧迫、体の向きを変える、

眠たくなる薬、痛みが和らぐ薬などを

必要に応じて併用して対処していくことになります。

 

また場合によっては、食事を食べないまま、

次の日も腸をきれいにする上記の液体を飲んで頂き、

きれいになったら大腸カメラを行うという方法をとることもあります。

 

 

腸の動きが強い人

 

腸の動きが強いと、次の腸の方向が確認しにくくなり、

場合によっては確認できないことがあります。

 

腸の動きを抑える薬を追加したり、

眠たくなる薬、痛みが和らぐ薬など動きを抑えることで

検査が可能となることが多いですが、

それでもコントロールが難しい場合があります。

 

そのような時は、腸を押しながらカメラを進めていく形になってしまうので、

腸が伸びやすくなり、痛みを生じやすくなります。

 

このような場合は、上記の薬に加えて

カメラの種類、お腹の圧迫、体の向きを変えるなどを行い、

できるだけ腸を伸ばさないようにして対処しています。

 

 

最後に

 

大腸カメラの目的は、基本的には大腸がんの有無を確認することです。

 

そのため本当に急いで行わなければいけないケースは少ないです。

 

上記のような方は、大腸カメラで痛みが出やすく、

体質のようなものもありますが、

体調の悪い時に急いで受けるとさらに痛みが出やすいの注意が必要です。

 

そのため、

症状がなくて体の調子が良い時にこそ

定期的に大腸カメラを受けることを勧めます。

 

そのようにすることで

早期発見につながりますし、

大腸カメラで痛みが出る確率を下げることができます。

 

この情報が大腸カメラを受けるのを悩んでいる方や

大腸カメラで辛い思いをされた方の一助になれば幸いです。

 

 

 

 

 

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