Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【大腸がん】転移の有無に関わらず、可能であればまず手術を勧める本当の理由。

大腸がんの治療は、手術が行えるようであれば

まず手術を行うことが勧められます。

 

これは他の臓器への転移の有無に関わらず勧められます。

 

「どうして手術を受けないといけないのか。

がんの治療には、他に抗がん剤や放射線による治療があるのではないのか。」

と思われる方もいるでしょう。

 

今回はまず手術が勧められる理由について詳しく書いていきます。

 

 

 

抗がん剤の進歩で年単位で生きていけるようになった

 

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まず手術が勧めらる理由は、

他の臓器に転移があっても(ステージ4であっても)

抗がん剤治療でがん細胞をコントロールして

年単位で生きることができるようになったからです。

 

 

抗がん剤は全ての場所で一様に効く訳ではない

 

抗がん剤がそれ程効くようになったならば

「抗がん剤治療だけ行えば良いのではないか」

と考える方もいるでしょう。

 

「抗がん剤治療を行えば、大腸がんの部分(原発巣)も

小さくなるから、わざわざ手術をしなくても良いのではないか。」と。

 

しかし残念ながら、抗がん剤治療の効果は一様ではありません。

転移した部分(転移巣)には効果があっても、

原発巣にはあまり効かないことがあります。

 

 

抗がん剤治療を続けられなくなることもある

 

原発巣にあまり効かないと

腸ががんで詰まってしまったり、

同部位から出血しやすくなります。

 

また痛みが出現する原因にもなりますし、

直腸に近いと、激しい蠕動が起こり、

それに伴う痛みが出現することもあります。

 

その結果、症状の治療を優先する必要があり、

予定通り抗がん剤治療を行えなくなることがあります。

 

場合によっては出血がどうしてもコントロールできなくなったり、

腸が詰まって破裂し、緊急手術が必要になることもあります。

 

 

抗がん剤治療中の手術は危険が多い

 

抗がん剤治療中の手術には様々な危険があります。

 

・手術前後で抗がん剤による副作用が出現する可能性がある。

    →好中球などが減少してきていると、感染しやすくなる。

・抗がん剤による副作用が出現した時、手術によるものと判断が難しい。

    →治療開始が遅れがちになる。

抗がん剤によって傷が治りにくいものがある。

    →手術による縫合不全のリスクが上がる。

 ・抗がん剤治療によって、体力が低下している。

     →手術でさらに低下し、

         手術が成功しても抗がん剤を続けていけなくなることがある。

 

など、抗がん剤を始める前より、手術に対して万全の状態ではなく、

状態によって病気や持病が進行していて

手術自体受けられないこともあります。

 

 

抗がん剤の量を調節し、副作用を軽減させられる

 

原発巣を手術で切除していれば、

転移巣のコントロールだけに専念できます。

 

ほとんどの場合は、肝臓や肺への転移です。

(時にはリンパ節や腹膜ということあります。)

 

肝臓や肺への転移は、CTなどを見ながら余裕をもって治療をできるので

病気の勢いと患者さんの状態をみて、

投与量を増減したりすることができます。

 

また投与量を減量しても副作用で辛い場合は

抗がん剤の投与間隔を延ばすことも可能ですし、

病状によっては一旦休薬することも可能になります。

 

実際に数ヶ月休薬して、大きな病状変化なく

抗がん剤を続けられている方もおられます。

 

もし原発巣が切除されていなければ、

原発巣が大きくなると腸が詰まる可能性もあるので

上記のような臨機応変な対応は難しいです。

 

そのため、できるだけ抗がん剤の量を減らさずに

スケジュール通りの間隔で投与し続ける必要が出てきます。

 

その結果、副作用で辛くなっても

症状が良くなるまで待てないこともしばしば起こります。

結果的に副作用が常にある状態で

抗がん剤治療が続けられることが多くなってしまいます。

 

 

最後に

 

大腸がんに対する抗がん剤は本当に進歩しました。

ステージ4であっても年単位の生存が可能になっています。

 

また年単位の生存が可能になったからこそ、

手術で原発巣を切除しなかった時に

起こる問題が増えています。

 

それは原発巣自体の問題であったり、

副作用が常にある状態で残りの人生を過ごすなどの問題です。

 

これらを最小限にするために、大腸がんについては

転移の有無にかかわらず、

切除可能であればまず手術をお勧めします。

 

この記事が手術を迷われている方の一助になれば幸いです。

 

 

 

 

 

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