Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【大腸がん】ステージ4や再発時こそ放射線治療を常に考えるべき【目的/効果/限界/がん細胞の死滅/症状緩和】。

大腸がんが進行癌の状態で見つかった時、

「手術をしましょう」とか

「抗がん剤をしましょう」と

医師に言われることが多いと思います。

 

「放射線治療はできないの?」と疑問に思い医師に聞いてみても

納得ができない答えが返ってきたという人が多いことを

耳にします。

 

今回は放射線治療の限界と、放射線治療を行う3つの目的を中心に

放射線治療の紹介をしていきます。

 

 

 

放射線治療とは

 

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高いエネルギーをもつ電子線、X線、ガンマ線、

粒子線(陽子線、重粒子線)を使って、

がん細胞の遺伝子を傷つける。

 

それによって、がん細胞を死滅させる方法です。

 

 

放射線治療の目的

 

大腸がんに対する放射線治療の目的は、大きく分けて以下の3つあります。

 

 

直腸がんの手術前にがん細胞を死滅させる

 

抗がん剤と放射線治療を併用する術前化学放射線療法を行ったうえで、

直腸がんの手術を行う方法があります。

 

切除した病巣を顕微鏡で観察すると、

約10〜20%の確率でがん細胞が死滅しています。

 

しかし、完全にがん細胞が死滅したかどうかを確認するには、

実際にがんがあった部分を切除して顕微鏡で確認するしかないため、

最終的には切除が行われます。

 

そのため、CTや内視鏡検査でがん細胞が消失しているように見えても、

病巣があった部分を手術で取り除くのが一般的な方法になります。 

 

がんが小さくなって人工肛門を避けられる場合もありますが、

 

中心が肛門近くにある直腸癌については

人工肛門を避けられないことが多いです。

 

また放射線治療と抗がん剤の副作用などにより

適切な手術のタイミングを逃すこともあります。

 

さらに縫合不全などの合併症も多くなります。

 

そのため、この治療自体を行なっていない病院も多く、

実際には初めから手術を行う施設が多いです。

 

 

転移した部分のがん細胞を消失させる

 

前述したように放射線治療には、大腸がんを消滅させ得る効果があります。

転移したとしていてもオリゴメタスタシスの状態であれば、

がん細胞を消滅させることができる場合があります。

 

例えば、肺気腫などがあり、

呼吸機能が悪くて肺転移に対する手術ができない場合、

放射線治療を検討します。

 

www.good-life-good-health.com

 

 

がんによる痛みや出血などの症状を抑える

 

これは症状を緩和することを目的とした放射線治療です。

がん細胞を死滅させることが目的ではありません。

 

骨盤の中にできた大腸がんによる痛み、

骨への転移による痛み、がんからの出血に用いられ

約70%の患者さんの症状が改善します。

 

がん細胞を死滅させる力は弱いですが、

がんを小さくして症状を抑え、

より快適な生活を送ることを支えてくれます。

 

 

負担は少ないが、治療である限り副作用は起こり得る

 

手術のようにお腹の中を切る訳ではなく、

抗がん剤のよりピンポイントで治療を行うので、

体への負担が少ないです。

 

そのため、高齢の方でも安心して受けることができます。

 

ただし治療である以上副作用の可能性はあります。

そのため、放射線科の医師から治療のメリットとデメリットを

しっかり聞いて下さい。

 

 

放射線治療の限界

 

放射線治療も万能ではありません。

以下のような限界があります。

 

 

放射線をあてた部分にしか効果がない

 

放射線はそれをあてた部分にしか効果がありません。

そのため、がん細胞が全身に散っている場合には、

放射線をあてた部分以外のがんを縮小させることはできません。

 

つまり、どこか特定の場所にあるがん細胞より

全身に散ったがん細胞の方が身体に悪さをしているような時は、

放射線治療のメリットはほとんどないと言えます。

 

 

放射線治療が提案されないことがある

 

主治医が放射線治療のことに詳しくないために、

本来であれば放射線治療を受けた方が良い場面であるにもかかわらず

放射線治療が提案されないことがあります。

 

海外ではがん患者さんの6割が放射線治療を受けているのに対し、

日本では3割しか受けていないという報告があります。

 

 

放射線治療を受ける際は施設選びも重要

 

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ある放射線科の医師に「これ以上、放射線治療はできない」

と言われても、他の病院の医師からは、

「まだ放射線治療をする余地がある」と言われる場合があります。

 

このようなケースでは、

高度なテクニックを要する放射線治療になることが多く、

限られた病院でしか受けられません。

 

遠方にしか病院がないこともあり、

その場合は遠方の病院に1ヶ月くらい滞在して放射線治療を受け、

その後再び地元の病院で治療を受けるというのも選択肢になります。

 

 

最後に

 

直腸癌の術前に抗がん剤と併用する

放射線治療はあります。

 

この治療では最終的には手術を行い、

人工肛門を避けられないことも多く、

最初から手術による治療を行う施設が多いです。

 

しかしステージ4や再発の大腸がんは違います。

問題となる場所が全身より、局所であれば、

放射線治療は有効な治療法となります。

 

つまり、

 

ステージ4や再発の大腸がんこそ、

放射線治療を常に視野に入れて治療を受けていくことが大切です。

 

抗がん剤治療が上手くいかない時や

がんの痛みをなかなか取り除くことができない時、

主治医が放射線治療に詳しくない時、

放射線科の医師へのセカンドオピニオンを検討してみて下さい。

「放射線治療を受けてみてはどうか」と提案されることがあります。

 

それにより、がん細胞や

がんに伴う症状をよりコントロールできる可能性があります。

 

この記事がより多くの大腸がん患者さんのお役に立てれば幸いです。

 

 

 

 

 

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