Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【大腸がん】開腹手術 vs 腹腔鏡手術。受けるなら、どちらが良い?

勇気を出して大腸カメラを行った結果、ポリープが見つかり、

「カメラでは取りきれないので手術をしましょう。」

と手術を勧められたとします。

 

その時、

開腹手術を希望されますか?

それとも腹腔鏡手術を希望されますか?

 

実際には医師の方から「どちらを希望されますか」と言われるよりは

「貴方の場合はこちらを進めますが、いかがでしょうか」

というように提案をされると思います。

 

しかしその時に間違った知識を持っていると

どちらも嫌だから手術以外の方法で治療してくれるような

民間療法を頼ってしまったり、

そうでなくても決定するのに大きなストレスを感じることになるでしょう。

 

そのようなことがないように、あるいはストレスを軽減できるように

今回は大腸がんに対する開腹手術と腹腔鏡手術について

書いていきます。

 

 

開腹手術とは

 

お腹を切開して行う手術で、昔から行われている手術の方法です。

そのため、手術自体を行う外科医がいれば

どの病院でも行うことができます。

 

 

腹腔鏡手術とは

 

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お腹に4〜5個の穴をあけて、そこから腹腔鏡と呼ばれる

手術用のカメラと器具を入れます。

そして手術部位を液晶画面に映し出しながら、

入れた器具で臓器を切ったり、血管を縛ったり、糸で縫ったりして

手術を行います。

 

最近はもっと少ない穴で治療ができることもあります。

 

以前は、腹腔鏡手術は大きな大腸がんには不向きと言われていましたが、

最近は大きな大腸がんに対しても行われ、

安全に行う方法も広く普及しています。

 

 

腹腔鏡手術のメリット

 

開腹手術と腹腔鏡手術では、がんの治癒率とされている5年生存率や

手術による合併症の割合が同じとされていますが、

腹腔鏡手術には以下のようなメリットがあります。

 

・傷が小さい

・手術後の痛みが少ない

・傷の回復も早い

 

そのため、腹腔鏡手術は安全に行える状況であれば、

まず最初に検討される手術方法になります。

 

 

腹腔鏡では手術を行うのが難しい場合

 

腹腔鏡手術は開腹手術と比べて術野が狭く、

開腹手術であると3次に見える臓器や血管を

2次元に置き換えて操作しなければいけないので

慣れやトレーニングが必要とされています。

 

その他、体の中の臓器や血管の境界がわかりにくい場合などは、

切除する臓器の確認が困難であったりして、

出血などの合併症が増える危険があり、

安全に腹腔鏡手術が行えない場合があります。

 

そのため、腹腔鏡による手術で安全にがんを切除できることが多いですが、

以下のような時は基本的に開腹手術を行うことになります。

 

・医師が腹腔鏡の手術のトレーニングをしっかり受けていない場合

・尿管などの周囲の臓器に大腸がんが浸潤している場合

・お腹の癒着が強い場合

・患者さんの状態が、開腹手術でやった方が安全と考えられる場合

 

また腹腔鏡手術を試みた場合でも、以下のような場合は

安全のために、手術中に開腹手術に切り替えることがあります。

 

・お腹の中の癒着が手術前に予想していたより強かった場合

・腹腔鏡手術ではコントロールが難しい出血が生じた場合

 

 

結局どちらの手術を行うのが良いか

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上記のようにそれぞれの手術にメリットとデメリットがあります。

 

そして患者さんの状況ごとで、どちらの方がメリットがあるか、

デメリットがあるか変わります。

 

上記のような一般的な考え方を知った上で、

手術の執刀医が考える貴方にとってより安全にできると考えられる方法で

手術を受けることをお勧めします。

 

どちらの術式でも、

がんの治療の最終目標である5年生存率がほとんど変わらない以上、

患者さんにとって安全な術式を優先して頂けたらと思います。

 

 

「がん」の最終的な「ステージ」は手術をした後に決まる

 

大腸がんを切除した後、「がん」がどこまで浸潤しているか、

リンパ節への転移があるかを顕微鏡で確認します。

 

手術前にもCTで確認はしていますが、

CTでリンパ節が腫れていてもリンパ節への転移がないことがあり、

腫れていなくても、リンパ節への転移があることがあります。

 

そのため、他臓器への転移がなく、手術で切除できるような大腸がんの

最終的なステージは手術後に切除した「がん」と、

リンパ節を顕微鏡で見た後で決まります。

 

そしてリンパ節転移がある場合は、ステージ3となり、

手術後に抗がん剤治療を受けることが勧められます。

 

なぜなら、抗がん剤治療を加えることでより再発率を下げ、

5年生存率も高くなることがわかっているからです。

 

 

直腸がんでもロボット支援下手術が保険適用になった

 

2018年4月、直腸がんに対するロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ手術)

が保険適用になりました。

 

「ダ・ヴィンチ手術」の特徴の1つは、

専用の鉗子が多数の関節を持つためによく曲がり、

人間の手よりも繊細な動きができることです。

 

さらに3D画像を見ながら手術ができます。

 

つまり、従来の腹腔鏡手術よりも優れた空間認識を持ちながら

手術をすることができます。

 

その結果、従来の手術よりも正確で繊細な手術ができると考えられており、

患者さんの体に対する負担を軽減できることが期待されています。

 

現在は直腸がんのダ・ヴィンチ手術ができる医師は少ないですが、

今後はこの手術を行う病院が増えてくることが予想されています。

 

 

最後に

 

以上のように

腹腔鏡手術と開腹手術にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。

 

治療成績が同じであるため、

医師が貴方にとって安全な術式と考える方法で

治療を受けることを勧めます。

 

その際に、上記のような一般的な考え方を知っていれば、

より医師の説明に納得しやすくなり、

説明前後や説明される時のストレスも軽減されると思います。

 

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