Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【患者さんの疑問】外来医師は座っているだけで暇そうなのに、どうして予約しても待ち時間が長いのか。

病院に行くと誰もが1度は思ったことがあると思います。

「とにかく待ち時間が長い。」と。

 

わざわざ仕事を休んできたのに、

診察の外からみると医師は暇そうにしている医師がいるのに

どうしてこんなに長い時間待たせるのか。

 

理由もわからずに長いこと待たされ、イライラが限界を超え、

受付や看護師、医師にクレームを言ったことがある方も

沢山いると思います。

 

ここでは一見暇そうにも見える医師がどのような理由で

患者さんを待たせることになってしまうのか。

またこのようなクレームがどうして全国で頻回に繰り返し起こってしまうのか

について書いていきます。

 

 

 

外来を担当する医師は本当は一番忙しい

 

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日本では国民皆保険制度ということもあり、

医療費が海外の国と比べるとかなり安く

その分、外来に来られる患者さんの数は多いです。

 

そのため、外来は基本的には大変混み合っています。

アメリカのある総合内科のクリニックでは、

特に検査をしなくても1人の患者さんに20分の予約枠をとっています。

 

しかし日本では3分から10分未満で1人を診察しなければいけないことが

多いと言われています。

 

その上、総合病院では多くの検査が必要になることがあり、

アメリカの総合内科のクリニックのように特に検査をしなくても良い

という訳にはいきません。

 

カルテの記載もあるので、かなり無理な時間設定です。

 

つまり、普通に患者さんの話をきいて診察をしていては

はじめから予約枠の時間内では終わらないこともよくあるという

ことになります。

 

その上、沢山の予想外の出来事が起こります。

 

医師には、一人一人をしっかり診察をしなければいけないと思いつつ、

患者さんを待たせたくないという思いが常にあります。

 

しかし外来には制限時間があります。

ある決められた時間内で診察しなければいけません。

 

それは検査や内視鏡治療、病棟管理、手術の

どこでも言えることでも言えることですが、

外来は患者数だけでなく、

初診の方がいて一から問診・検査を行う必要があったり

急に書類が必要になるケースなども沢山あります。

 

いずれにしても外来は一番時間に追われる場所であり、

この点で医師にとって一番大変な場所です。

 

 

外来患者さんを待たせてしまう原因

 

外来患者さんを待たせてしまう原因ですが、

具体的には以下のようなものがあります。

 

・救急搬送を含む急患の来院

・病棟での担当患者さんの急変

・当日入院になった時の指示出しなど、多量の書類作成

・急に要求された診断書や入院証明書の作成

・当日必要な紹介状の作成や、その返事の作成

・検査の予定はなかった予約患者に急に検査が必要になったとき

・内視鏡などの検査について説明および、同意書への記載

・緊急で内視鏡治療や手術が必要なとき

・検査や治療の結果、突然必要になった詳細な病状説明(告知)

・患者さんの話が終わらない(クレームを含む)

・予約枠の最後の方に患者さんが一斉に来院され

    次の予約枠の人と重なってしまう。

 

などです。

 

これらが単一あるいは複雑に絡み合って診察時間が遅れていき、

外来の患者さんを待たせてしまうことになってしまっています。

 

 

他の医師も外来中の相談は最小限にしている

 

外来をしている医師は前述のように常に時間に追われていることが多く、

外来を行なっている最中は看護師などの医療スタッフだけでなく、

同じ科の医師ですら相談しづらいです。

 

時間に追われてイライラしていることもある相談しづらいということも

時にはありますが、自分が相談することによって外来の進行を遅らせ、

ただでさえ待たせてしまっているような患者さんをさらに待たせてしまうと

容易に想像できるからです。

 

そのため、本当に緊急性がある患者さんのこと以外は

入院中の患者さんのことでも外来終了後に相談することが多いです。

 

このように同じ科の医師でさえ、外来が停滞しないように

常に気をつけています。

 

 

最後に

 

外来患者さんを担当している医師はかなり厳しい時間制限の中で

出来るだけ多くの患者さんの病状が良い方向に向かうように

毎回奮闘しています。

 

決して暇な訳ではありません。

 

ただ、そのことはもちろん

患者さんを待たせることを許容させる理由にはなりません。

 

しかし待たせてしまうのには、それなりの突発的な理由が存在し、

それが高い頻度で起こるのが医療です。

なぜなら、患者さんが病院に来られるのも、

病状が悪くなるのも突然であることがほとんどだからです。

 

このように外来とは、不確実なことが高頻度で起こる環境で

厳しい制限時間を設けられた過酷な場所であることは

知っておいて欲しいと思います。

 

一方で病気で困った人をできる限り受け入れるという国民皆保険の中で

出来るだけ多くの患者さんを診察し、病状を良い方向に持っていけるように

医療スタッフ全員で常に協力して頑張っていることも

知って頂けると幸いです。

 

 

 

 

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