Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【重要】受動喫煙による死亡は年間1.5万人(推計)。「おもてなし」も含めて早期の屋内全面禁煙は必須。

「タバコの煙が嫌で仕方がない」

「バス停でタバコを吸っている人をみて蹴り倒そうと思った」

「タバコを吸いながら、背後から傍を取りすぎて行って喘息が悪化した」

「同居している人がタバコを吸っていて、毎日煙と戦っていて辛い」

など受動喫煙に苦しんでいませんか?

 

非喫煙者の方は誰もがタバコの煙で

苦しんだり、嫌な思いをされていると思います。

 

なぜなら、日本では屋内ですら100%完全禁煙にはなっておらず、

タバコの煙をどうしても避けられない環境になっているからです。

 

今回は今も多くの人が苦しんでいる

この受動喫煙の問題について書いていきます。

 

 

 

受動喫煙による健康への悪影響

 

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受動喫煙の悪影響を世界で初めて証明したのは、

日本人の40歳以上の非喫煙の妻、約9万人を14年間(1966-1979年)追跡調査し、

夫が非喫煙者の妻と比較して、

夫が喫煙者である場合の肺がんの相対リスクが高くなる、

という結果でした。

 

その当時の状況を想定して

家庭内で喫煙を行われる実験が2010年に行われました。

結果、タバコから発生した微小粒子状物質(PM2.5)が、

襖の隙間から隣の部屋に拡散していくことが確認されました。

 

タバコの煙にはベンゼン、ホルムアルデヒド、タバコ特異的ニトロソアミンなど

数十種類の発癌物質が含まれています。

 

また有機物が不完全燃焼して発生する煙はPM2.5であるため、

肺の最深部にまで吸入されて炎症を起こし、

動脈硬化の原因にもなります。

 

その結果、喫煙者の周囲で生活し、

長時間にわたり受動喫煙に暴露された非喫煙者は

様々な病気(発がん、COPD、心筋梗塞、脳卒中など)になるリスクが

高くなります。

 

結果として、年間1.5万人の人が受動喫煙で亡くなっていると推計されています。 

 

 

喫煙室を設置しても、受動喫煙は防げない

 

オフィスの一角に開放型の喫煙コーナーを設置した例では、

オフィス全体をタバコの煙が汚染していたことが多くみられました。

 

そのため、喫煙室が設けられるようになりましたが、

実際に運用してみると、

 

・ドアの押し開き

・喫煙者の退出に伴う空気の乱れ

・肺内に貯留するタバコ煙の喫煙室外での呼出

 

により、喫煙室では受動喫煙を防止できないことが明らかになりました。

 

 

喫煙室を作ると、従業員も高濃度の受動喫煙に暴露される

 

喫煙室を設置すると、

喫煙室内には当然タバコの煙が充満しています。

 

そのため、喫煙者だけでなく、

そこで働く従業員も仕事のために高濃度の受動喫煙に暴露されます。

 

例えば、サービス残業で喫煙席を残した場合は、

接客を行わなければならず、受動喫煙は避けられません。

 

空港や新幹線のホームなどの公共場所や宿泊施設に喫煙室を残した場合は、

清掃業者の方が仕事中に受動喫煙に暴露されることを避けられません。

 

 

世界的にも遅れている、日本の受動喫煙対策

 

2004年、国際がん研究機関(IARC)は

「受動喫煙は、非喫煙者に肺癌や心筋梗塞などの深刻な健康への影響をもたらす」

と結論しています。

 

さらに2005年に発行され、日本をはじめ世界190ヵ国が批准している

「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」では、

「喫煙室や空気清浄機などの工学的な対策では受動喫煙は防止できない」

と明記され、「飲食店などのサービス産業を含め、屋内を100%禁煙する」

ことを締約国に求めています。

 

2016年の時点で既に55ヵ国が一般の職場や公共施設だけでなく、

レストランやバー(居酒屋)を含めて

屋内を全面禁煙とする法規制を行なっています。

 

その他海外では、タバコの消費を減らすほどの値上げ、

タバコのパッケージに写真を印刷した協力な警告、

テレビCMなどによる禁煙キャンペーンによる

包括的な喫煙対策が進んでいます。

 

日本でも2020年の東京オリンピックをきっかけに

2018年に改正健康増進法、東京都受動喫煙防止条例が成立し、

喫煙対策に進展がみられました。

 

しかしそれにより、日本ではようやく全国の45%の飲食店が原則禁煙、

都条例により都内の84%の飲食店が原則禁煙になる見込みであり、

WHOが求めている100%完全禁煙には全く届かない状況です。

 

 

海外で実際に屋内を全面禁煙にすることで得られたメリット

 

国内が全面禁煙化された国々では

国民の喫煙関連疾患の入院リスクが減少したと報告されました。

 

また禁煙とした範囲がレストランやバーを含んで広いほど

そのリスク減少の程度が大きいことが報告されました。

 

このことからも、屋内を全面禁煙とすることが重要であることが

示されています。

 

 

最後に

 

受動喫煙による健康被害が明らかにされている現在において、

何故これほど対策が遅れているのか理解に苦しむ部分があります。

 

屋内の全面禁煙の有効性が示されているのであれば、

少なくともそのようにすることは必須でしょう。

 

早期に対策をとれば、イメージもアップしますが、

対策が遅れれば遅れるほど、

イメージもダウンし、健康被害も増えるという二重苦になります。

 

日本人と日本に住むひとの健康を守るためだけでなく、

海外から来られる人への「おもてなし」としても

早急に受動喫煙対策を整備することが必要ではないでしょうか。

 

 

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