Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【重要】早期からのリハビリテーション(体を動かしたり、運動すること)が手術の合併症・抗がん剤の副作用を軽減し、苦痛を和らげる。

 

 

はじめに

 

がんの手術前や、抗がん剤治療中に「リハビリをしましょう」

医師から勧められて

 

「今は手術や抗がん剤に集中したいのに、何故今やらないといけないのか。」

「病人なんだから、リハビリ何て無理だ。」

と思って困惑したり、イライラされた方はいませんか?

 

今回はそのような方のために、

がん治療に対する最近のリハビリテーション(以下リハビリ)の

考え方について書いていきます。

 

 

最近のリハビリの考え方

 

10年以上前までは確かに、

病気や怪我の治療ある程度落ち着いてから

リハビリを開始することが多かったです。

 

つまり病気が落ち着くまで安静にし、

筋力が衰えたり、関節が硬くなって動く時に痛みを伴うなどの状態から

リハビリが開始されていました。

 

その結果、思うように体が動かず、

リハビリが進まないことが多かったです。

 

そのため、最近では

病気やけがをした直後からリハビリを開始することになりました。

 

実際には施設ごとの環境にもよりますが、

人呼吸器に装着されている状態でも可能であれば

リハビリが行われる時代になりました。

 

そうしているうちに、

たとえ軽い負荷であっても早期からリハビリを行っていた方が

体の回復が早いことがわかりました。

 

 

がんに対するリハビリの考え方

 

がんの場合は、出来るだけ早期にリハビリを行うことが

手術の合併症や抗がん剤の副作用を減らし、

その後も苦痛を減らし、寿命も伸ばすと言われています。

 

では具体的に「早期とはどのくらいの時期」を指すのでしょうか。

 

 

手術や抗がん剤などの治療を行う前からリハビリを開始する

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可能であれば「がん」と診断された時(治療を行う前)から、

リハビリを行うのが良いと考えられています。

 

そして手術を終えたら、

翌日から動く練習をして、

足腰を弱らせないようにします。

 

入院して抗がん剤治療を受けるなら

多くの場合、治療中もリハビリを行います。

 

そうすることで抗がん剤による副作用を減らすことができます。

 

手術を受けた人は当然ですが、

抗がん剤治療を受けている人も

本人が気づかないうちに体力や筋力が低下していきます。

 

体力や筋力が低下すると抗がん剤の副作用が出やすくなります。

 

いったん副作用が出てしまうと

体力や筋力はさらに低下し、

より副作用が出やすい体になります。

 

リハビリでこのような悪循環に陥りにくいようにします。

 

またこのような状態になった場合、

その悪循環を断ち切ることもリハビリの重要な役目です。

 

 

がんの末期になってもリハビリは苦痛を和らげる

 

ではリハビリはいつまで続けるのか。

可能であれば、がんで亡くなられるまでです。

 

リハビリを行うことで、

今ある体の機能の低下を最小限に抑えることができ、

それによってがんによる苦痛を和らげることができるからです。

 

そうは言っても

「体が辛い状態でリハビリなんて出来る訳ないじゃないですか」

と思う方もおられるでしょう。

実際にそのように言われる患者さんもおられます。

 

しかし負担にならない範囲で

患者さんごとに置かれれている状況や体調に応じて行うため、

実際にはリハビリが可能であることがほとんどです。

 

仮にリハビリがかえって苦痛につながってしまう場合は、

内容を見直し、

苦痛が出ない範囲でリハビリを行います。

 

それでも苦痛が勝るようであれば、

リハビリを終了することを検討します。

 

実際の患者さんは日ごとに体調も変化することが多いので、

その後の状況に応じて再開したり、

回数を減らしてリハビリを再開することも多いです。

 

 

空き時間に安全な範囲で自主的にリハビリをすることをお勧めします

 

病院でリハビリを行うと、

リハビリの先生が来た時だけリハビリをしている患者さんが多いです。

 

そのため、せっかく体の調子が改善してきても

病院が休みでリハビリの先生が来れなくて、リハビリできなかった

という理由で、再び体の調子を崩したり、

思うように改善せずに入院期間が長くなって調子を崩す人が多いです。

 

病院が休みの日にリハビリの先生を呼ぶことは現実的でないこと

いずれは1人でも継続できる方が自分の体調をより良い状態に

もっていきやすいです。

 

そのため

可能であれば、「こここまでは1人でやっていていいよ」という部分を

リハビリの先生に教えてもらって

つまり、先生に宿題を出してもらって

空き時間に自分でもリハビリを行うことを勧めます。

 

 

最後に

 

リハビリは病気や怪我になった直後から開始することが

当たり前の時代になりました。

 

がんについては、

診断したらすぐに始めることが良いとされています。

 

それにより手術の合併症や抗がん剤の副作用を減らし、

苦痛自体を和らげる効果があります。

 

これからは

病気になったら安静第一という昔の考え方を捨て、

適度な安静と適度なリハビリ(運動)を両立させましょう。

 

 

 

 

 

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