Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【ステージ4】大腸がんでは肝臓や肺に転移・再発しても腫瘍を取り切れる可能性がある(オリゴメタスタシス)。治すことが困難な場合でも年単位の生存が可能。

がんのステージ4と聞けば、「もう助からない」

というイメージがあるのではないでしょうか。

 

食道がんや胃がん、膵臓がん、肝臓がん、肺がんなど

多くのがんのステージ4は抗がん剤治療などで

がんを小さくすることができたとしても

がん細胞を取りきることはできません。

 

しかし「大腸がん」は違います。

何故でしょう?

 

今回は大腸がんはステージ4でも、

がん細胞を取り切ることができる場合があることについて、

書いていきます。

 

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ステージ4の大腸がんとはどのような状態?

 

具体的には、次のような場合を指します。

 

・肺や肝臓といった臓器に転移している

・大腸がんある部分(原発巣)から

    遠く離れたところにあるリンパ節に転移している

・腹膜にがん細胞が散らばっている(腹膜播種)

 

このような状況では、がん細胞が全身に回っているため、

たとえ目に見えるがんを切除できたとしても、

がんは治らない(取りきれない)と考えられています。

 

そのため、全身に回ったがん細胞を制御する目的で、

抗がん剤治療が必要になるのです。

 

 

ステージ4でも、がんが全身に回っていない場合がある

 

ところが最近「オリゴメタスタシス」という概念があります。

これは、原発巣から遠く離れた部位に転移をしていても、

がん細胞は全身に回っておらず、

数カ所の限局した部分だけとどまっていることがあるという考え方です。

 

このことを事実として裏付ける根拠として、

肝臓に転移した大腸がんを切除できた場合、

抗がん剤治療を受けなくても30%程度の方は再発しないとされています。

 

もし全身にがん細胞が回っているのならば、

たとえ肝臓に転移した部分も切除しても

ほぼ100%どこかにがんが再発するはずです。

 

このような事実からステージ4や再発であっても、

必ずしもがん細胞は全身に回っているとはいえず、

手術で取りきれる見込みがある場合はステージ4でも

がんの完治を目指すようになりました。

 

 

手術で取りきれない場合

 

逆に、手術で取りきれないケースは以下のような場合があります。

 

肝臓全体に無数の転移がある

肺に4個以上の転移がある

原発巣から離れた腹膜に多数の転移(播種)がある

 

これらの場合は、全身にがん細胞が回っていると考えられます。

 

 

腫瘍を取りきれない場合でも可能であればまず手術を行う

 

大腸がんの場合は、抗がん剤治療が効くことが多く、

がんを取りきれなくても年単位で生存できることが多くなっています。

 

そのため、大腸にがんを残したまま抗がん剤を行うと、

途中で疼痛や出血、腸閉塞などのトラブルを起こし、

緊急手術を行わなければいけないことがあります。

 

この場合は手術を行うのに十分な体力や体の予備能力があるとは限らず、

また手術の準備を十分に行わずに手術をすることになるので

これを契機に命を落とす危険が通常より高くなります。

 

そのため、まず初めに原発巣だけ切除することが多いです。

 

このようにすると肺や肝臓にある無数の転移巣と、

リンパ節の転移巣だけ残るので、

原発数のトラブルを気にして

必ずしも高用量の抗がん剤を投与しなくてもよくなります。

 

そのため、副作用の出にくいレベルで

抗がん剤治療でがんをコントロールしていくことが可能になります。 

それによって生活の質を出来るだけ落とさずに、

症状もコントロールしていくということが可能になります。

 

この間に、天寿を全うされる方もおられ、

そういう方の場合には、がん細胞は取りきれなくても

がんが治ったのに近い効果があると思います。

 

 

最後に

 

大腸がんはステージ4でも、全身にがん細胞が回っているとは限らず、

切除して治ることもあります。

 

また、抗がん剤治療が発達してきているため、

がん細胞が取りきれないようなステージ4の大腸がんであっても

年単位で生存することが可能になっています。

 

そのため、ステージ4であっても「もう助からない」ではなく、

また安易に民間療法に走るのでもなく、

主治医と一緒に貴方の病状に合った

ステージ4(大腸がん)の治療を考えていくことをお勧めします。

 

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