生まれてきた子供を見ていると、
「このまま元気で過ごして欲しい」と、
親ならそう思うでしょう。
普段タバコを吸われているお母さんもそう思っていると
思います。
今回は喫煙している若い夫婦(特に女性)が
子供のことで後悔しないように
妊娠前から始まって出産後も続くタバコの害を中心に
小児喘息のリスクについて書いていきます。
- タバコ(受動喫煙)などが小児喘息を引き起こす
- 妊娠の可能性がある段階から禁煙する
- 妊娠中も禁煙する
- 出産後も成人して家を離れるまでずっと禁煙する
- 妊婦のみならず、家族の喫煙が影響する
- 小児喘息になっても禁煙が重要
- 子供の能動喫煙にも注意
- PM2.5や黄砂も小児喘息の発作が起こりやすくなる
- その他の注意すべき大気汚染物質
- 室内環境汚染の予防方法
- 最後に
タバコ(受動喫煙)などが小児喘息を引き起こす
子供の時期に起こる気管支喘息のことを小児喘息と言います。
気管支喘息は、遺伝的な素因と環境因子が絡み合って発症するとされています。
タバコ(受動喫煙)などによる大気・室内環境の汚染は環境因子であり、
これらを避けることで、
子供が気管支喘息になる確率を下げることができます。
しかしいつ頃からいつまで、気をつければ良いかについては
実はあまり知られていないのではないでしょうか。
妊娠の可能性がある段階から禁煙する
実は妊娠がわかった時には胎内でタバコ煙由来の
化学物質の暴露を受けている可能性があると言われています。
そのため、妊娠がわかってからではなく、
妊娠する可能性がある段階から、禁煙する必要があります。
妊娠中も禁煙する
妊娠中に妊婦が喫煙することで低出生体重児となり、
喘息を発症するリスクとなることが報告されています。
また妊娠中の母親が喫煙することで、
7歳の時点での子供の喘息リスクを35%高めることが報告されています。
つまり、妊娠がわかってからも当然禁煙が必要になります。
出産後も成人して家を離れるまでずっと禁煙する
ではいつまで禁煙が必要か。
乳児期(1歳頃まで)の受動喫煙が喘息の発症だけでなく、
下気道感染のリスクを高め、
学童期(6〜12歳)にまで及ぶ呼吸機能低下を引き起こす
要因となるとされています。
つまり、いつまで禁煙していれば良いというものはありません。
同居している限りは、ずっと禁煙しているのが良いとされています。
妊婦のみならず、家族の喫煙が影響する
妊婦のみならず、家族の喫煙が子供の喘息の発症や症状の増悪、
低肺機能と関連すると言われています。
同居している夫や祖父・祖母などが吸っていたら、
子供がタバコの煙を浴びることになるので当然ですよね。
小児喘息になっても禁煙が重要
子供が小児喘息になったら、もう禁煙しても意味がないと思ってはいけません。
タバコの煙への暴露は、喘息の増悪因子であり、
発作の誘引となるだけでなく、
吸入ステロイド薬による治療効果を減弱させます。
一方で保護者が禁煙することで、
児の喘息重症度が軽減することが報告されています。
つまり、たとえ子供が喘息になっても禁煙を続けることが大切です。
子供の能動喫煙にも注意
母親が喫煙をしていることがわかれば、子供もタバコを身近に感じるようになり、
喫煙する機会が増えます。
そのようにならないためには親の禁煙は必須です。
その上で子供への禁煙教育が必要となります。
特に中学生での喫煙開始が多くみられていることから、
小学校での禁煙教育が有用とされています。
PM2.5や黄砂も小児喘息の発作が起こりやすくなる
PM2.5濃度は喘息の発作による受診率と関係し、
増悪因子とされています。
日本ではディーゼル排気微粒子などへの対策により、
PM2.5の排出は著明に減少しましたが、
他の東アジアの国々では非常に高濃度のPM2.5が観測されており、
日本海を越えて大気汚染を引き起こしています。
また東南アジア内陸部の砂漠の砂(黄砂)も小児喘息の発作を
引き起こすとされており、発症への影響も懸念されています。
個人ではマスクの使用が有効ですが、サージカルマスク(通常のマスク)では
PM10であれば70%減少させることができますが、
PM2.5は30%しか減少させることができず、
バンダナなどの布ではほとんど減少効果はないと報告されています。
そのため、多く飛散する日には外出を避けるのが賢明です。
その他の注意すべき大気汚染物質
花火、線香、蚊取り線香、たき火、調理器具、暖房器具などから発生する煙、
自動車の排気ガス、化粧品、香水、ヘアスプレー、接着剤、防虫剤、
生花などの臭気は喘息発作の誘引になるとされています。
中でも硫黄酸化物(SOx)は強力な気道収縮作用があるため、
その濃度が高い一部の火山や温泉地の観光には
注意する必要があると言われています。
また新築住宅やリフォームで発生するホルムアルデヒドなどの
揮発性有機化合物(VOC)も発作の原因になるとされています。
室内環境汚染の予防方法
大気・室内環境汚染でまず行うべきことは
汚染物質の除去です。
タバコの煙の場合はまず行うべきことは「禁煙」。
分煙では煙の侵入を防ぐことは全くできないため、
全面禁煙が唯一の解決策です。
その他の汚染物質で室内の汚染に対する予防では
まず行うべきことは「適切な換気」です。
特に石油やガスを用いた暖房・調理器具の使用時は
十分な換気を行うようにしましょう。
また汚染物質の発生源として揮発性有機化合物を発生する建材の使用や
家具の持ち込みは避けましょう。
最後に
タバコ煙を中心とした大気・室内環境汚染物質がアレルゲンと同様に
子供が胎内にいるときから成人に至るまで気管支喘息の発症
あるいは発作(増悪)のリスクとして働きます。
日本はWHOから喫煙防止対策後進国と指摘されていますが、
実際に法律レベルでの喫煙防止対策が先送りされています。
自治体レベルの受動喫煙防止条例は強制力がなく、
一人一人が意識して環境を改善していくしかないのが現状です。
上記のように同居者(特に母親)の喫煙が小児に与える影響は大きく、
小児喘息など子供の人生を左右する病気を発症させるリスクを
大きく上げてしまいます。
しかも妊娠前から出産後、そして成人して独り立ちするまでずっと
タバコによる害は影響します。
これから子供を生もうと考えている喫煙者の方、
既に胎内にでも子供がいる方、
子供が大きくなって喫煙を再開してしまった方、すぐに禁煙しましょう。