Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【大腸がんステージ4】がんの治療中でも工夫次第で仕事を続けることができる【抗がん剤/副作用/退職/仕事量/同僚の協力/生きる目的/楽しみ】

「がんと告知されたので、仕事をやめました」

 

このように患者さんの中には、がんと診断されただけで

仕事を続けることが難しいと自己判断して

仕事を辞めてしまう方がいます。

 

その結果、孤独を感じるようになったり、

生きる目的や楽しみを失ったり、

経済的にも余裕がなくなったりして

がんの治療もかえって上手くいかなくなることも

少なくありません。

 

今回はがんの治療中でも

工夫次第で仕事を続けることができること、

仕事を続けることで得られるメリットについて

書いていきます。

 

 

 

がんの治療中でも仕事を続けることは可能

 

がんと診断されたことはショックなことですが、

実はがんの治療中でも仕事を続けている方は沢山おられます。

 

特に大腸がんでは、抗がん剤の進歩もあり、

ステージ4でも多くの場合で

年単位でがんをコントロールし、

症状をコントロールすることが可能になりました。

 

また、新しく抗がん剤を使う時には安全のために

入院で治療を行うこともありますが、

ほとんどの場合は外来で抗がん剤治療をできるようになりました。

 

 

仕事を続けることのメリット

 

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仕事を続けていると以下のようなメリットがあります。

 

・社会とのつながりを感じることができることで、孤独を感じにくくなる。

・がん以外のことを考える時間が増えて、気持ちが落ち着く。

経済的に余裕ができる。

生きるための目的ができる。

生きている実感を感じる。

・本当に大切な人との絆が強くなる。

 

逆に仕事を辞めると、これらを喪失するため、

生きるための目的や楽しみを見失ってしまうことがあります。

 

 

仕事を続けていく上での注意点

 

次の2点に特に注意することが大切です。

 

 

抗がん剤の副作用を抑える

 

がんや、抗がん剤の副作用による症状がある方は、

仕事を継続できる割合が低くなります。

 

そのため、これらの症状を取り除くことが大切です。

工夫をすれば、がんや副作用による症状は

もっと取り除くことができます。

 

たとえば主治医に

「仕事ができる程度の副作用に抑えて欲しい」と

伝えてみるとよいでしょう。

 

そうすることで

副作用の出にくい方法で抗がん剤治療を行うことが可能です。

 

ただし人によっては予想以上に副作用が出やすいことがあります。

つまり、薬の反応は投与してみてはじめてわかるので、

副作用が出現した場合は遠慮せずに主治医に伝えましょう。

 

特にオキサリプラチンなどの末梢神経障害が出現する薬は、

副作用が軽いうちに中止することによって、

投与後に手足のしびれが残ることを防ぐことができます。

 

しかし遠慮して主治医に伝えるのが遅くなってしまうと

上記のしびれ(神経障害)が残ってしまいやすくなり、

日常生活に支障をきたすようになってしまいます。

 

 

仕事量を抑える

 

仕事を続けていたとしても、

健康な時と同じように働ける訳ではありません。

健康な時以上に、体を気遣って働かなければいけません。

 

もし健康な時と同じように働いてしまうと

仕事が終わって家に帰った途端倒れてしまいます。

 

そのような余裕のない生活では、

仕事を続けることはできないでしょう。

 

そこで、仕事量を抑える工夫が必要になります。

そのためには同僚の協力を仰ぐことも必要です。

 

同僚の協力を仰ぐのであれば、

がんであることをカミングアウトしないといけません。

 

あるアンケート結果によると、

「がんのことを職場にカミングアウトして良かった」

と答えた人が多数を占めていたという結果が出ています。

 

がんになっても約8割の人が仕事を続けている

という結果もありました。

 

最近はがん治療を受けながら働くことに

理解を示してくれる企業が多いのでしょう。

 

 

仕事を辞めるという結論を出した場合

 

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もし働かないという結論を出しても

家でじっとしていないで様々な活動をしてみて下さい。

 

生きるための目的や楽しみを見つけることは

がんを向き合ううえで大切なことです。

 

パークゴルフ、ボランティア、お孫さんの世話

といったことでも良いです。

 

先日、何十年ぶりに囲碁をしたという患者さんがいました。

とても楽しかったとのことでした。

 

何をしたら良いかすぐに浮かばない場合は、

普段とちょっと違うことをしてみましょう。

 

映画館や小旅行に行ってみる、

町内のゴミ拾いに参加してみる、

孫とお祭りに行ってみるといったことです。

 

そのような一見小さなように思えることが

あなたの人生に大きな変化を引き起こしてくれるでしょう。

 

 

最後に

 

がんと診断されてすぐに自己判断で仕事を辞める方がおられますが、

実際にはがんの治療中であっても

仕事を続けることができる場合が多いです。

 

そして仕事を続けることで得られるメリットは多く、

そこで得られたものが、がん治療を続ける理由になることも多いです。

 

仕事を続けたい思いが残っているのであれば、

是非仕事を続けていく方向で治療を考えていくことをお勧めします。

 

もし仕事を続けないという結論を出したとしても

家でじっとせずに、様々な活動に参加して

生きるための目的や楽しみを見つけてください。

 

この記事ががんと診断されて、

仕事を続けるかどうか悩んでいる方に届き、

その決断の一助となることを願っています。

 

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