Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【先進医療】粒子線治療は、大腸がんの骨盤内再発や肝臓への転移に有効【陽子線/重粒子線/放射線治療/照射計画/工夫/医師の腕/病院選び】

経済的に余裕がある方、保険で先進医療特約に加入されている方で

大腸がんの骨盤内転移や肝臓への転移がある場合は、

粒子線治療がお勧めです。

 

今回はその理由と効果について書いていきます。

 

 

 

先進医療とは

 

高度な医療技術を用いた治療のうち、公的医療保険の対象になっていないものの、

有効性や安全性について一定の基準を満たしたものを言います。

 

粒子線治療は、先進医療として受けることができる放射線治療の1つです。

 

 

粒子線治療とは

 

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加速させた陽子を体の外から病変にあてる陽子線治療と、

炭素イオンをあてる重粒子線治療の2種類があります。

 

通常の放射線治療で用いられるX線と比較して

がん病巣のみに線量を集中させて正常組織への影響を抑えることができます。

 

 

重粒子線の効果

 

がん細胞に対する殺傷能力はX線と比較すると、

重粒子線は2〜3倍、陽子線は1.1倍あるとされています。

 

前述のがん病巣に線量を集中させやすい特性も合わせると、

粒子線治療は通常の放射線治療では効果が得られにくいとされるがんに対しても

効果が期待できます。

 

例えば、直腸がんの手術後の骨盤内再発に対する

放射線医学総合研究所での粒子線治療の治療成績(2016年)は、

5年局所制御率が88%、5年生存率が59%でした。

 

一般の放射線治療での5年局所制御率は30%以下、5年生存率は10%以下であり、

粒子線治療は一般の放射線治療の成績に比較して良好な成績です。

 

同様に肝臓に転移した大腸がんに対しての粒子線治療も

良好な成績が報告されています。

 

以上より粒子線治療は、大腸がんに対して

とても有効な治療法であると言えます。

 

 

粒子線治療の限界

 

しかし、どのような状況においても粒子線治療の方が

従来の放射線治療よりも効果が高い訳でありません。

 

病変が小腸や十二指腸といった消化管と数ミリ程度しか離れていない場合は、

重粒子線をあてると消化管に穴があいてしまうため、

粒子線治療をすることはできないと判断されることもあります。

 

このような場合は、

従来の放射線治療が選択されることがあります。

 

 

照射を行う病院を選ぶことも大切

 

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放射線治療は、照射を計画する医師の腕や、

照射の機械によって治療成績が異なります。

 

そのため、患者さんにとって本当に勧められる治療であれば、

1ヶ月ほど遠方の病院で治療を行うよう勧めることもあります。

 

最終的には受ける治療の内容と、病院との距離、

経済的な余裕の程度によって

判断することになります。

 

 

最後に

 

経済的余裕がある場合や、保険で先進医療特約に加入されている場合は

粒子線治療も検討することが大切です。

 

例えば大腸がんの骨盤内再発や、肝臓への転移には有効です。

その他、今回は詳しく述べませんでしたが、

局所にとどまる膵臓がんについても有効

であることが報告されています。

 

一方で粒子線治療が行えない場合もあります。

しかし従来の放射線治療であっても、照射の方法を工夫すれば、

粒子線治療に匹敵する治療効果を出すことができるケースもあるので

そのことは忘れないでいて下さい。

 

今回の記事が、がん治療に悩まれている方の一助になれば幸いです。

 

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