「抗がん剤治療何て効かない」
「抗がん剤は副作用が強く、毒である」
と言った情報が世間で人気があるようですが、
本当に抗がん剤は効かないのでしょうか?
少なくとも大腸がんに対しては、飛躍的な進歩を遂げ
ステージ4の大腸がんで、生存期間を大きく延ばしています。
中には手術ができるくらいに腫瘍が小さくなることもあります。
今回は、主に抗がん剤治療が必要となるステージ4の大腸がんについて
抗がん剤治療の効果について書いていきます。
抗がん剤治療の進歩
近年大腸がんの抗がん剤は大幅に進歩しました。
以前はそれほど効果が期待できませんでした。
生存期間中央値(50%の人が生存できる期間)で言うと、
50年前は約5ヶ月、
つまり数ヶ月しか生きることができませんでした。
30年前でも、1年ほどでした。
それが最近では生存期間中央値が30ヶ月を超えています。
つまり、年単位で生きることが可能になってきました。
抗がん剤治療で年単位の生存が可能になった理由
その理由は、効き目が強く、
切れ味の鋭い抗がん剤が使えるようになったことです。
その代表的な抗がん剤は、
イリノテカン、オキサリプラチン、
分子標的薬(ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツマブ)です。
このように数は限られていますが、
効果の高い抗がん剤が使えるようになり、
大腸がんはステージ4であっても年単位の生存が可能になりました。
抗がん剤の弱点
しかし抗がん剤にも弱点はあります。
始めはよく効いたとしても、使い続けうちに効きにくくなります。
これはがん細胞も生きるのに必死だからです。
そのため、抗がん剤の攻撃から逃れようとして
自らを抗がん剤の攻撃が効きにくいように変えます。
このようにして、抗がん剤に対して耐性をもつようになります。
使用できる抗がん剤の種類が多いほど、長生きできる
耐性ができて、抗がん剤が効かなくなるので、
別の種類の抗がん剤を用いて治療をしていくことになります。
しかし別の抗がん剤に変えてはじめは効果があっても、
しばらくすると再び効果がなくなります。
そのようになったら、3番目、4番目・・・と、
異なる種類の抗がん剤で治療していくことになります。
そのため、使用できる抗がん剤の種類が多いほど、
より長期間にわたってがんを抑えて長く生きることができます。
言い換えると、もし貴方が抗がん剤治療を受けない方が良いと言われて
民間療法に走り、抗がん剤を行うのに適した時期を逃すと、
使用できる抗がん剤治療がなくなってしまい、
寿命がかなり短くなってしまう危険があります。
抗がん剤治療を行うことで、手術を行える場合がある
1番目、2番目と異なる抗がん剤治療をしている間に、
手術が出来るくらいがんが小さくなった場合は、
手術や放射線治療を追加して完治を目指すことになります。
完治を目指せない場合の抗がん剤との付き合い方
抗がん剤治療を受ける以上、
誰もが完治の状態に近づけたいと望むと思います。
しかし願ったような結果にならないこともあるでしょう。
その時は、がん細胞増殖を長期間にわたって制御することを
目的とします。
がん細胞を体の中からすべて消し去ることができなくても、
命を奪うほどの大きさにならなければ、
基本的には死ぬことはありません。
つまり、がんとの戦いに勝つのではなく、
「引き分けにもっていく」という考え方です。
細く長くがんと闘っていくと表現することもできます。
抗がん剤治療によってがんが小さくなったとしても
抗がん剤に対して耐性ができ、
がんが急に大きくなることがあります。
一方で、がんはそれほど小さくならなくても、
がん細胞の増殖を抑え続けることができれば
より長く生きることができます。
したがって、完治を目指せない場合、
がんを大きくしないようなレベルで抗がん剤治療を行う。
このようにすることで副作用の出現を抑えることも可能になり、
がん自体と治療による負担を少なくして、
天寿を全うするまで生活していく。
これが、ステージ4や再発に対する抗がん剤治療との付き合い方として
私がお勧めする方法です。
最後に
大腸がんの抗がん剤治療は本当に大きな進歩を遂げました。
抗がん剤治療に対する副作用対策も昔と比べると
かなり充実しています。
さらに抗がん剤で高い効果を期待できるようになったことで、
治療の目的によって、副作用が出にくいように
抗がん剤の投与方法(投与量や種類など)を工夫するが
できるようになりました。
医学は常に進歩しています。
確かに人によって状況が異なり、抗がん剤に対する反応も異なります。
それでも全ての人にとって、抗がん剤治療が
今後の生活を支えるのに重要な選択肢となっています。
昔の情報だけで「抗がん剤は効かない」と判断すると
せっかくの治療機会を逃し、
寿命に縮めてしまうことになる可能性が高いです。
そのようにして治療機会を失って来院される方が
今だに後を絶ちません。
まずは病院を受診して、
主治医の話をしっかりと聞いてみて下さい。
一人でも多くの人が、周囲の甘い囁きで
自らの治療機会を失うことがないように
心から祈っています。