Doctor’s health log(内科医の視点)

総合病院の内科医師が実際の体験を通して健康回復・維持・増進の方法を紹介する雑記ブログ。

【重要】2004年にLancetで発表。日本では医療被曝によってがんになる人が、他の先進国より3〜5倍と飛び抜けて高い

 

 

安易にCTをお願いしたり、撮っていませんか?

f:id:good-life-good-health:20190527105251p:plain

「お腹が少し痛いのでCTとって下さい。」

「頭を少し打ったのCTとって下さい。」

と本来CTをとらなくて良さそうなタイミングや

他の検査で代用できるのに安易にCTを撮るようにお願いしたことはありませんか?

 

また医療者から必要以上に

頻回にCTをとるように勧められたことはありませんか?

 

「CT1回では大した被曝にならないから大丈夫。」

という意見は多いですが、本当にそうでしょうか。

 

今回は医療被曝の現状と対策について書いていきます。

 

 

日本での医療被曝の現状

 

被曝量については色々な説があり、

1回の被曝量が多いか少ないかについては議論があります。

 

しかし実際に医療被曝によってがんになる人はいないのでしょうか?

 

 

日本では医療被曝によってがんになる人が、圧倒的に高い

 

「日本では医療被曝が多く、それによってがんになる人が

年間758人(がんになる人の3.2%)発生している。」

ということが2004年有名な医学雑誌Lancetで報告されました。

(引用:https://www.jrrs.org/about/activity/20160326-4.html


 

これは他の先進国より3〜5倍高い数値と言われており、

CTは他の検査より被曝量がかなり多く、

CTの撮影が影響していると考えられています。

 

この結果は、

CT1回の被曝量はそれほどではないと考える人がいたとしても

頻回に撮影されれば、がんの原因になり得る

ということを意味しています。

 

 

どうしてCTを頻回に撮影するようになったのか

 

日本にはある程度大きな病院であればほとんどの施設にCTがあり、

非常にCTを撮影しやすい環境にあります。

 

またCTは寝ているだけですぐに、簡単に撮れる検査です。

もちろんCTにも不得手な部分はありますが、

腹部エコーみたいに空気が邪魔になって見えにくいことはないですし、

MRIみたいに時間がかかる訳でもないです。 

 

そのこともあって、日本では

医師は安易にCTを撮ってしまいやすく、

患者は安易にCTをお願いしてしまいやすい環境にあります。

 

また万が一被曝によってがんができたとしても、

がんが検査で指摘できるくらいの大きさになるには、

少なくとも10〜20年はかかります。

 

そのため、がんになっても

その原因が被曝であるということが非常にわかりにくいです。

 

結果として、

先進国の中でCTを頻回に撮影される国になり、

他の国よりずっと医療被曝によるがんの発生率が高くなったと考えられています。

 

 

最後に

 

日本ではCTを安易にとる傾向があり、

医療被曝でがんになる人が、他の先進国より3〜5倍と高くなっています。

 

CTは非常に精度が高く、多くの有用な情報を教えてくれ、

より的確な診断と治療を行うには必要になることが多い検査です。

しかし医療被曝のことを考えると、

できる限り適切なタイミングで撮影し、

必要最小限の回数とするように努力すべきと考えます。

 

私たちのグループではもちろんこのことに気をつけて検査をしていますが、

残念ながら医療者や患者さん全員が

このことを考えて検査を行っている訳ではありません。

 

また患者さんに強要されると

私たちも回避することができなくなります。

 

そのため、患者さん自身にも気をつけてもらう必要があります。

CT検査を提案された時は、

他の検査で代用できないかを確認する習慣をつけることを勧めます。

 

特に10年後、20年後も元気で生活している可能性が高い方や、

妊娠を希望されている人は医療被曝の問題に注意を払って欲しいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スポンサーリンク